今回は、『ワークフロー・ミニマリズム』 『ネットワーク図・ミニマリズム』 の作業風景を書きます。
概念的なことじゃないので、気軽に楽しんでください。

PlanningFlow4(以下 Pf4) の仕事、いろいろと面白かったですが、何が一番楽しかったと言ったら、そりゃあもう、 グラフィックデザイナーさんに、あーだこーだ注文出しながら絵を作ってもらった、あの過程です。
やっぱり、セッションは楽しい。(最近は ”コラボレーション” て言うんでしたっけ? どうも慣れないな)

Pf4 の出荷が年を越したのは不本意でしたが、待てば海路の日和あり と言いますか、 そのおかげで、知り合いのグラフィックデザイナーさんのスケジュールが空いて、絵のパレットを作ってもらえました。
いくら機能を用意しても、すぐ使えるパレットが少しは揃っていないと、インパクトがありません。 『平面図形』 と 『JIS フローチャート』 だけでは、あまりにも寂しい。 幾何学的な図形だけじゃなく、ビジュアルな絵のパレットが欲しかったのです。
それも、何か今までとは違う感じのするやつが。

ミニマリズムのイメージを出したのは僕のほうからで、最初に会ったとき、こんな話をしました。

90年代の前半ってのは、Windows が Mac を追いやって、パソコンを制覇してゆく時期。
”おしゃれな平面” デザインの Mac に対抗するためか、パソコンの能力が向上したためか、 それまでのパソコンにはなかった、斜めのアングルから見た立体的な絵や、影とハイライトを使った3D表示が、もてはやされた。
3D であることが価値を持った時代。

今のビジネスグラフィックスソフトの多くは、90年代前半に生まれていて、ステンシル/シンボル の絵には、
そうした生まれた年代の影響か、立体画が多い。
でも、絵としてはそれほどいい出来じゃない。 3D が当たり前になった今、振り返ってみると、はっきり言って、ちゃちな 3D。

今はもう 3D や影を見ただけで喜ぶ人はいない。
“2Dより3Dが上”、 “影なしより影ありが上”、 なんて価値観は消滅。
2D は 2D。3D は 3D。動画は動画。 それぞれ良さがある。
ビジネス文書の中であれば、ちゃちな3D は、カッコいい2D に劣ると感じる。

ソフトメーカーとしては、最初はまず、シンプルな画風を用意したい。
それに、今のビジネスグラフィックスたちの ”アンチ” をやりたい気持ちもある。

知り合いと言っても、大昔に山スキーでご一緒しただけ。 仕事の付き合いはありません。
不安もあったのですが、さすがに経験豊富。すぐに、こちらの意図を理解してくれました。

 「じゃあ、ピクトグラム風の絵 で行きますか?」
 「ピクトグラム って何です?」
 「トイレ とか 非常口 とかを示す、ああいった絵です。オリンピックの競技のマークとか。」
 「ああ。なるほど。」
 「一貫性を与えることが大事なんです。
  シドニーのマークなんかは、必ずどこかにブーメランを入れて、一貫性を持たせていましたよね。」
 「え? え? ちょっと描いてみて。」
 「ピクトグラムは一歩間違うと、”幼稚” な印象を与えるんです。ビジネス用途なら、そこを注意しなければ。」

これだから、セッションは楽しいっつーの。(コラボレーションか)
あとは、実際に絵を作りながら、進めていきました。
作業の進め方は、メールでのキャッチボール。
使う道具は、グラフィックデザイナーさんが Adobe Illustrator。 こちらは TreeMemo です。

依頼書 ( TreeMemo )

 『ワークフロー ミニマリズム』
    『人』
       人
          「人」 はすべてミニマムにしてスタイリッシュに
       歩く人
       走る人
       デスクワークしてる人
       デスクワークで大忙しの人
       パソコンを打つ人
       パソコンで大忙しの人
       電話する人
       挨拶する人
       名刺交換
       握手
       立ち話 (1対1)
       座って打合せ (1対1)
       座ってる人に立ってる人が説明 (1対1)
       会議
       プレゼン
          大勢に向かい話すものすべて のシンボル
       食事
          食事しながらの打合せ・接待
       決裁 (承認)
          どんな絵がいいのか
    『建物』
       ビル
       工場
          どんな絵がいいのか?
          現代の実際の工場は四角い。そのまま絵にしても工場に見えない
          「直角三角形のギザギザ屋根に 煙突から煙もくもく」 だと工場に見える
             こんな工場、今やないけど。
             若い世代の工場のイメージはどうなのだろう?
       倉庫
          工場と同じ問題がある
       自宅
          これもアパートだと自宅に見えない
          サザエさんのエンドタイトルに出てくる家のほうが 「自宅」 っぽい
          でも、子供の世代はどうなのだろう?

 『ネットワーク図 ミニマリズム』
    デスクトップパソコン
       ミニタワー/デスクトップ/省スペースデスクトップ なんて、
       描き分けたらキリがない。絵は一つでいい
       横から描くと、ブラウン管モニターと液晶モニターを別にしなきゃならなくなるので注意
    ノートパソコン
    サブノート
    ハンドヘルド
    通信付ハンドヘルド
       ハンドヘルドにアンテナを立て、アンテナの回りに 「通信」 を示すカミナリを
    プリンタ
    スキャナ
       コピー機、プリンタ、スキャナ の違いを明確に
          ユーザーが区別して使えるように
    サーバコンピュータ
       パソコンのフルタワーをふた回り大きくしたようなもの
       実際はモニターが付いているが、絵としてはモニターは要らない
    大型コンピュータ
       今や大型コンピュータの実物を見る人は、システムエンジニアでも稀
       だから、創作の世界でいい。工場と同じ
    携帯電話
    固定電話
    FAX
       コピー機、プリンタ、スキャナ、FAX の違いを明確に (大変でしょうけど)
          ユーザーが区別して使えるように
    通信 (カミナリ線)
       これはプログラム側で用意します。絵は必要なし
    e-mail
       紙の郵便と区別できることが肝心
    データベース
       フローチャートで使われる円柱の絵で
       近々見本を送ります
    フロッピーディスク (兼 MO, DVD, リムーバブルディスク)
       あの手のカートリッジディスクのシンボル。一つで賄う
       FD と DVD はユーザーが大きさを変えればいい
       FD と MO はユーザーが 「FD」 「MO」 と添え書きすればいい
    CD
       あの手の裸ディスクのシンボル。一つで賄う
       CD-ROM,CD-RW,裸DVD はユーザーが 「CD-ROM」 「DVD」 と添え書きして区別
    印字された紙
     :
     :

+ + + + +

とにかくサンプル画を描いてみよう、ということになり、
 「何から行きましょ?」
 「人ですね。 人が固まれば、あとは問題ないと思います。」
ということで、人のサンプル画からスタートしました。

最初のサンプル ( Illustrator )

人のサンプル画

サンプルの感想 ( TreeMemo )

  人の絵
   基本形
      単純な絵って難しいですね。
      横から見た人間をシンプルに描くのがこんなに難しいとは...
      ところで男女兼用ですよね?
  歩く人の絵
   歩く人
      いい感じ
  走る人の絵
   走る人
      少し 「転びそうな人」 に見える
  挨拶の絵
   挨拶
      少し 「頭突きする人」 に見える
      もう少し離すとどんな感じでしょう?
      離れすぎると、一個の絵として一体感に欠けるでしょうか
  名刺交換の絵
   名刺交換
      少しだけ互いにおじきさせると、それらしいかなと感じます
  電話する人の絵
   電話する人
      これも難しいネタですね
      「携帯電話」 の絵が描きやすいので、業務フロー中ではそちらを使ったほうが、わかりやすいかも知れない
  1対1で話すの絵
   1:1で話す
      「正座する二人」 に見える
         いやあ。難しいですね!
      「多勢で会議」 はわかりやすいです。
         「多勢で会議」 から、頭数を減らしてはどうでしょう?
  多勢で会議の絵
   多勢で会議
      いい感じ
  パソコンで仕事する人の絵
   パソコンで仕事する人
      いい感じですね
      最初、違和感があったのですが、机の上&上半身だけ、で表現するのに目が慣れたら、すごくいい感じです。

サンプル第二段

人のサンプル画 少し修正

サンプルの感想

     注
      もうこのままでパレットに載せられると思うものには OK とつけました

  人の絵
   基本形
      OK
         最初のより、いい感じです
  走る人の絵
   走る人
      OK
         コミカルだけど...好きです
  挨拶の絵
   挨拶
      OK
  名刺交換の絵
   名刺交換
      OK
  電話する人の絵
   電話する人
      肩から上だけのほうがいい気もします
      全身や上半身だと、つい具象したくなります
         立って携帯で電話するとか
         机で電話するとか
      でも、業務フローで、机/携帯 を書き分ける必要があるかというとなあ...
  座って打合せの絵
   座って打合せ 1対1
      OK
         Goodです
      ちなみに、テーブル上に、ノートパソコンや資料を広げるとウルサイでしょうか?
  多勢で会議の絵
   多勢で会議
      OK
  プレゼンの絵
   プレゼン
      OK
         気に入りました (嬉しくなってきました)

サンプル第三段

人のサンプル画

サンプルの感想

  パソコンで大忙しの絵
   パソコンで大忙し
      うまい !!
      でも、やや迫力に欠ける
      と思って、昔使っていたシールを見てみたのですが、シールでは、
         汗と 「へ」 の字に曲げた口と、吊り上げた眉で 「大忙し」 を表している
            顔が描いてあるので、そういう細工ができる
      ミニマリズムの画風では、限界がありますね
      OK
  デスクワークの絵
   デスクワーク
      OK
  デスクワークで大忙しの絵
   デスクワークで大忙し
      OK
  電話する人の絵
   電話する人
      OK
         絵の意図が、はっきり 「電話」 だとわかります
         「携帯する人」 と 「電話する人」 で絵も二つ用意したいですが、全体量との兼ね合いで決めます
         絵は二つとも取っておいてください
  立ち話の絵
   立ち話
      立ち話にも見えれば、「立ち合い」 にも見えます
      もう少しおじぎの角度を緩めて
      手も、まわしを取りに行くのではなく、「く」 の字に曲げてみてはどうでしょう?
  立ち話(小道具付き)の絵
   立ち話 (小道具付き)
      OK
         Good! 小道具が効いていますね
  食事の絵
   食事
      「チェス選手権」 のように見えます。 といって、具体的なアイデアはないのですが
  食事しながら打合せの絵
   食事しながら打合せ
      ぐっとよくなりました。小道具効いています
      でも、ワイングラスに見えるので、ちょっとリアリティーがない
      どうでしょう?
         A案. 絵をコーヒーカップに代えて、タイトルを 「お茶しながら打合せ」 に変更
         B案. パンやどんぶりを食卓に置き、箸を持たせる
   
  座ってる人に立ってる人が説明の絵
   座ってる人に立ってる人が説明
      「さんまの愛の説教部屋」 に見えてしまいました。
         すいません。ゆうべ見たので

      こんな場面に使いたいのです
         部下が上司に説明するとき
            上司は座ったまま、部下は立っている
         営業マンが取引先の担当者に説明するとき
            担当者は座ったまま、営業は立っている

      机があったほうがいいかも知れません
      資料などの小道具も効くかも
         「立ち話」 のカバンを使うと、「部下が上司」 の場面では変ですが

人が固まってきたので、ほかのものを作り出しました。
ほとんどスイスイ進んだのですが、難しかったものを幾つかピックアップしてみます。

サンプル画

サンプル画

サンプルの感想

  携帯電話の絵
   携帯電話
      ばっちりです。
      すごくマニアックな点で1つ気になる
         これは NEC の中折れ式携帯
         あれは画面も広く、一番優れたデザインだと思う
         けど、少数派。 でも気にすることないか? それに今後は主流になるかも?
   
  携帯電話の絵
   もう1つの携帯電話
      これに名前をつけるとしたら何にします?
         「送信・受信する携帯電話」 ? 「鳴る携帯電話」 ?
      業務フローで使ううえでは、ばっちりです。
         送信・受信 どちらも使える。言葉で補えばいい

      ただの興味ですが、「鳴る携帯」 って難しいですね
         「鳴るスピーカー」 なら ))) をつけてやればそれらしいけど
         携帯の周囲四方向に ((( ))) ってつけたら、鳴ってる感じしますかね
   
  デスクトップPCの絵
   デスクトップPC
      OK
      ですが、ノートPCと並べると、絵の細かさが違います。
      それと、最近の機種では、モニタの下に座布団のように本体があるのは稀、という気もします
      手前にキーボードとマウス。うしろにモニタ。という絵も描いてみてもらえませんか?
         本体は今、省スペース型の細長いのと、床置きの大きいのがありますが、無視して描かないことにして
  ノートPCの絵
   ノートPC
      OK
  自宅の絵
   自宅
      素晴らしい絵です
      でも細か過ぎるし、家も立派過ぎます (役員宅って感じ)
      細かさの度合いは、ビルや工場との釣り合いになると思います
   
  デジカメの絵
   デジカメ
      今さら思いますが、難しい注文でしたね
      デジカメの形がここまでバラエティーに富んでしまった今となっては
      また業務フローでの使い勝手で言ったら 「デジカメ」 より 「デジカメで撮影」 のほうが良い
      ハードウェアの形状だけで表現せず、「撮影してる」 ニュアンスを入れてみてもらえませんか
         具体的にはレンズの先に びびびっと 視野を示す点線が出てるとか
   
  ホームページの絵
   ホームページ
      OK
         この絵は 市販のフローソフトも苦労してます
         ブラウザの絵で行くか / 書類の絵で行くか / 家の絵で行くか だいたいそんなところだと思います
         カーソルは要らない気もします

      ひとつだけ馬鹿なアイデアを試してもらえませんか?
         ブラウザの画面に 「Welcome to My Home !」 って書いたらどうでしょう

サンプル画

サンプル画 少し修正

サンプルの感想

  携帯電話の絵
   携帯電話
      OK
         やっぱり中折れよりこのほうがいいです
         でも、中折れもブレイクするかも知れないので、
         絵は取っておいてください
  鳴る携帯電話の絵
   鳴る携帯電話
      OK
  デスクトップPCの絵
   デスクトップPC
      今度はノートPCよりも具象になっちゃった気がします
         ここまで具象すると、もう 「ミニマリズム」 ではないですね
  自宅の絵
   自宅
      やっぱり、もっとミニマムなのが欲しい
  デジカメの絵
   デジカメ
      ありがとうございます。苦労かけますね
      ただ、ケーブルをつなげて使うものじゃないと思いますので
      こうしましょう
         「撮影」 を新規追加
         「デジカメ」 をやめて 「カメラ」 にする
  ホームページの絵
   ホームページ
      OK
      Welcome to My Home
         まったくダメでしたね。お手数かけました

      簡略化したブラウザか書類の絵に、「www」 って添えたら、どうでしょう?
         今度集まったとき、ダメ元でやってみませんか?

サンプル画

サンプル画 これで完成

+ + + + +

こうして絵柄ができたら、詰めの作業です。

 ・ 一つ一つの絵の出荷時サイズを決める
  画面でフローを作ってみて、A4 の用紙に印刷して、ちょうどいい大きさと情報量になるように、調整します。
  また、「デスクトップ」 と 「ノートパソコン」 などの相対的な大きさも揃えます。

 ・ パレットにまとめる

 ・ 絵ごとに、名前やコメントを入力する

 ・ パレット全体に、著作権表示の文面や、作者ホームページの URL、作者の仕事用メールアドレス などを入力する

以上で、終わりです。

今回は初めてだったし、グラフィックデザイナーさんに、いろいろ相談にも乗ってもらいたかったので、二度ほど集まりましたが、 次からは、メールのやり取りだけで全部できるのでは、と思います。
どうです? やってみません?

indysoft.jp 主宰
びーどろ